【数のはなし―ゼロから∞まで】 (Bunny Crumpacker著/東洋書林刊/2008)
2011.9.20 レビュー
本著は一言で表すと「数のトリビア」本である。 著者は数秘術師でも数学者でも無く、編集者・新聞コラムニストを経た著述家であるが、様々な視点から「数」と「数えるという行為」について記している。
取り扱っている数は1〜9、0、10、11、12、100、1,000、1,000,000、更にはグーゴル(10^100、つまり10の100乗)やグーゴルプレックス(10のグーゴル乗)、そして∞(無限大)である。
各数の項における構成は概ね、「諸民族がその数をどのように扱っていたか」「数が語源となっている単語群や慣用句の紹介」「神話的・歴史的・宗教的な数」「数学的・数秘術的アプローチ」「文学的アプローチ」等となっており、多角的に数のイメージを掴む事が可能となっている。
また各数の項には時折、歴史的著名人や著名な書物が取り上げた数に纏わるコメントや文章が散りばめられている。読み疲れてきた時にちょうど良いブレイクとなる事だろう。
ここで幾つかそのトリビアを紹介してみよう。
1…alone、lonely、only(昔はonely)、noneは全て「1(one)」が語源 2…数学記号の「-(マイナス)」に縦の取消し線を付けたものが「+(プラス)」 3…タコの心臓は3つ(左右のえらと本来の心臓)、ラクダは三重まぶた 4…薬指(第四指)に結婚指輪をはめるのはそこに「愛の静脈(vena amoris)」があるから 5…国内で敵国支援活動をする売国勢力の事をスペイン内乱時の逸話から「第五列」と呼ぶ 6…スペイン語のsiesta(午睡)は昔、日出〜日没を12時間としていた頃の6番目の時間の事 7…1〜10でどんな数の倍数でも約数でも無い数は「7」のみであり、正に孤独の数 8…記号に先端が8つある「#」の本当の名前はオクトソープ(octothorpe) 9…サンスクリット語で「9」の同義語であるchhidraは「穴」の意。人体には9つ穴がある為 0…テニスで用いる0点の意の「ラブ(love)」は、仏語で卵を意味する「ルフ(l'oeuf)」に由来
著者がアメリカ人である為、本著で取り上げられている数あるトリビア群やエピソード等は日本人には余り馴染みの無いものも多いし、そもそも数秘術を占いで用いる際には殆ど役には立たないだろう。 それでもこの数多くの「数のトリビア」は読者を数の不思議の世界に誘ってくれるに違いない。
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