【メイトリックス博士の驚異の数秘術】 (Martin Gardner著/一松 信訳/紀伊国屋書店刊/1978)
2008.6.21 レビュー
この本の著者であるマーティン・ガードナー氏は数学者であり、かつ著述家、アマチュア手品師、懐疑論者であり、疑似科学・超常現象批判でも知られている実に多彩な経歴の人物である。 この本はさすがに著者が数学者だけあって、実に様々な数学の不可思議さを教えてくれている。
この本の主人公(架空人物)である、数秘術の世界的権威メイトリックス博士と著者との対談形式を中心にこの物語は繰り広げられていく。
博士の生い立ち(何故か鹿児島県生まれ)から始まり、1960年代のアメリカ大統領選挙予測を数秘術的解釈(ゲマトリア)にて行ったり、リンカーン大統領とケネディ大統領の暗殺における様々な共通点を示したり、円周率や平方数等の斬新なる数秘術的解釈を披露したり、ゲマトリア的手法によって古の詩の中に全く別なるメッセージを見出したり、積の魔方陣(縦・横・斜めの列の積がどれも等しい数になる)や宇宙船アポロ11号の月着陸についての数秘術的解釈・・・などなど様々な数秘術的コンテンツが溢れているのだ。 更に読者向けの問題も豊富に提供し、その回答や解説についても十分な紙幅を割いている。
とはいえこの本で取り上げられている数秘術は現代一般的に用いられている数秘術とは大いに異なり、あくまで高等数学の知識が多く求められるような、正に数学者向けの本なのだ。 まぁ数学的な知識に乏しくても、作中の登場人物で博士の秘書かつ娘である美しきアイヴァ嬢の姿をその文章で想像してみるのもまた一興かも知れない。
題名に「数秘術」とある為一般的な数秘術本であると思われがちだが、その実傾向としては 数学的パズル本・数学の不思議を紹介する本という言葉が当て嵌(は)まるだろう。 覚悟して読まないと図書館に即返還となるか、本棚の肥やしとなる事請け合いである。 しかし数学に興味を持つ方であれば、この本は普段中々垣間見る事の出来ない「数学的数秘術」を知る事の出来る数少ない書物である事は間違い無いであろう。
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